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この作品を撮ることになった経緯を教えてください。

受けることにしました。

意識して描かれたのでしょうか?

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世の中にステレオタイプがいまだ根付く中で、「結婚」をどのような視点や温度感で描くのかという観点が重要だったのではないか、と感じています。

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今回の作品に対して、周りからの反響はありましたか?

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キャストやスタッフは、性別も年齢も違えば、考え方も異なると思います。どのように作品のメッセージ性を共有されたのでしょうか。

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わたしが今後実践していきたいことの1つに、映像・映画業界のジェンダーバランスを均等にしていくことがあります。今は男女比がかなり大きくて、女性が全然いないんです。特に監督やカメラマン、録音技師などのメインスタッフが女性という作品は、ほとんどありません。なので今回「スタッフは誰が良いですか?」と聞かれたときには、率先して女性の名前を挙げるようにしました。多分、商業作品でエンドロールにこんなに女性スタッフの名前が挙がる映画は他にないと思います。それこそ、最初に女性の俳優4人が並ぶこともなかなかありません。いつもなら、絶対間に男性が入りますよね。

制作サイドで女性スタッフがいなかった部署は照明部と演出部だけでしたが、そこは業界としてもともと女性割合が小さいんです。今後は全部署に絶対1人は女性を入れてくれ、とオーダーしようと思っています。今後も業界のいろんなバランスを、どんどん変えていきたいと思っています。

作品では、男女や世代による価値観の違いも丁寧に描いていらっしゃると感じました。

ネットの記事とかで、見出しだけで読んだ気になって、辛辣なコメントをする人っているじゃないですか。とにかく物事はっきりしたいというか、分断したがるというか。そういう社会は本当に貧しいと思っています。だからこの映画を観るのに2時間捧げてくれた人には、誰かが悪いのではなく、男女や世代の違いからそういう言葉が出てこざるを得ない、という細かなニュアンスが伝わるといいなと思っています。

分断って、ある日急に起こるものではなくて、それぞれその人なりの人生の積み重ねがあるからそう考えてしまう、それだけなんだと思います。だからこそ、相手の背景を想像して、理解することが大事なんじゃないかな。映画の中で描かれる、人が人の言葉として喋っている姿から、断片的ではない、たくさんのものを感じ取ってもらえたら嬉しいです。

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選択的夫婦別姓の導入すら難航している日本社会において、ふくだ監督は作品などを通じて「こうあるべき」に囚われない姿を発信されている印象を持っています。

以前、事実婚を選択された方のエッセイを読んだことをインスタグラムに投稿したら、すごい反響がありました。「わたしも自分の名字を失いたくなかった」とか、「離婚して自分の姓を取り戻せたのがすごくうれしい」と。失礼ですが、「結婚すること」に対して何の疑問も持っていないだろうと思っていた友達や親戚からたくさん連絡がきたので驚きました。一方で男性の友人からは全く反応がなくて、ほとんどの男性は”自分が名字を変える”ことや”相手に名字を変えさせている”という意識がないんだなあ、と改めて感じました。個人的には「いいやん、選べれば」って思うんですけどね。

あと、夫婦が別姓であると子どもが不幸だ、という意見もあるのですが、そうなんでしょうか?最近はTwitterで夫婦別姓家庭当事者、という人が出てきて「子どもがかわいそうです」というコメントに対してせっせと返事をしてくれています。「わたしは不幸だと思ったこと、1度もありません」とか。わたしも養子当事者で「子どもがかわいそう論」はよく目にします。それもあり、よしよし、当事者が一番分かっているぞ!いけー!と応援しています(笑)。
漫画『ずっと独身でいるつもり?』の最後にある、原作の雨宮まみさんと漫画家のおかざき真里さんの対談で、人と違う環境で子育てをすると「子どもがかわいそう」と言われがち、という話がありました。その「かわいそう」の言葉に憤っているという部分に共感しました。

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今回の作品は出産後1作目とのことで、育児をされながらの監督業で大変なことはありましたか?

産後半年足らずで復帰したので、メンタル面も体力面も正直きつい部分はありました。前例がほぼなかったので、「産後いつ復帰しました?」って気軽に聞けるような女性の監督も周りにはいなくて。分からないながらもヘアメイクさんや女性の俳優さんに聞いてやってみましたが、これからやろうとしている人には、半年で現場復帰は「絶対にやめた方がいい!」と言います。

自分が妊娠をする前から、撮影現場に保育部が欲しいと思うようになりました。現場に子どもがいると、労働環境も良くなると思うんです。衣裳部屋の隣に子ども部屋を作って、仕事中は保育士さんにお任せして、休憩になったら会いに行って、という環境をつくりたいです。

あと、移住も予定しています。監督業は打ち合わせも多く、それはリモートでも可能ですし、撮影と編集などの仕上げ作業以外は東京にいなくても問題ないんです。すでに移住した監督から「移住した方が収入が上がったよ」と聞いて、不安がひとつもなくなりました。

映画監督という仕事はとくに名前が大きく出るので、社会活動はしやすいと思っています。作品づくりだけじゃなく、労働環境やジェンダーバランスの改善も率先してやっていきたいです。今まで通りやってきた人にとってはめっちゃ面倒くさいと思うけど、でもそうでもしなきゃ、業界の人口は減っていく一方です。ちょっとでも働きやすくしく、ってやっていかないと続かない。だからわたしは率先して面倒くさいやつになろう、と思っています。

今後、映画を通じて発信していきたいことはありますか?

今回の映画の反省として、あまりにもセクシュアリティや恋愛観、性的指向の幅が狭すぎると感じました。主人公の女性4人のうち1人は車椅子に乗っている、元恋人は男性ではなく女性である、美穂はアセクシュアルの傾向もあるし、そう表現しても良かったはずです。次からは、シスジェンダーやヘテロセクシャルではない人たちを絶対に登場させたい。むしろこれまでとはバランスが全然違う、様々な人間が登場する映画を作っていきたいと思っています。

「人と違うからかわいそう」、それは結婚に限らず、様々な場面で自分自身に向けられる、あるいは周囲に向けてしまう視点として、まだまだ日常生活に深く根付いている。監督の作品やその言葉は、それらの視点に対して「もういいよ、うるせえよ」と言って良いのだ、と勇気を与えてくれる。お互いを否定するのではなく、分断するのでもなく、年代や場所など違う環境で生きてきた相手を理解する姿勢を持つこと。それがお互いを大切にし合い、そしてそれぞれの心地よい生き方を選択できる社会を築く第1歩なのではないだろうか。

映画監督という立場から作品を発信するだけでなく、映画界の働き方やジェンダーバランス、子育てしやすい環境づくりなど、様々な前例のない課題に目を向け改善に向け行動されているふくだ監督。
より良い社会に向けて、たとえ面倒くさいやつと言われようとも1つ1つ行動されている姿に、これからも注目していきたい。

ふくだももこ
1991年生まれ、大阪府出身。2015年、若手映画作家育成プロジェクト(ndjc)に選出され、短編映画『父の結婚』を監督、脚本。2016年、小説「えん」がすばる文学賞を受賞し小説家デビュー。2017年、小説「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」を発表。2019年、山戸結希企画・プロデュースのオムニバス映画『21世紀の女の子』で『セフレとセックスレス』を監督。また、『父の結婚』を自らリメイクした『おいしい家族』で長編監督デビュー。監督作として『君が世界のはじまり』(20)、ドラマ「深夜のダメ恋図鑑」(18/EX)、「カカフカカ」(19/ MBS)、演劇「夜だけがともだち」など映画、TV、舞台演出と幅広く活動中。また本作が自身の出産後初の監督作品でもある。

 

取材・文:大沼 芙実子
編集:おのれい
写真:©2021日活